亜鉛の摂取で髪の毛が早く伸びる?サプリメントや食品の選び方について解説
2020年に感染が拡大した新型コロナウイルスの後遺症の1つに脱毛が挙げられていますが、亜鉛不足がその一因ではないかという説もあります。
亜鉛は人体にとって欠かせない必須ミネラルの1つで、不足すると髪の毛のツヤが失われたり、味覚・嗅覚障害を招きやすくなったりすることが分かっています。
AGAを始めとする脱毛症を発症した場合に、亜鉛を摂取すると髪の毛が伸びるといわれることもありますが、実際のところはどうなのでしょうか。本記事では亜鉛と発毛との関係や、効果的な摂取法などについて解説します。
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目次
亜鉛の摂取で髪が伸びると言われるのはなぜ?
亜鉛に限った話ではありませんが、特定の食品を摂取することで明らかに髪の毛が伸びるような結果は期待できません。
亜鉛の摂取で髪の毛が伸びるといわれるのは、亜鉛が髪の毛を作る際に欠かせない必須アミノ酸の一種だからです。
亜鉛の摂取で髪の毛がみるみる伸びるわけではありませんが、髪の毛の成長のために必要な栄養素であることは間違いありません。
髪の毛を作り出す助けになる
亜鉛の摂取で髪の毛が伸びるといわれる理由の1つが、亜鉛が髪の毛を作り出す助けになるためです。髪の毛はタンパク質から作られますが、食事から摂取したタンパク質はいったんアミノ酸のレベルにまで分解され、身体の各部へと送られます。
髪の毛はタンパク質の一種であるケラチンから作られますが、アミノ酸をケラチンへ再合成する際に、亜鉛が重要なはたらきを果たします。そのため、アミノ酸を摂取すると髪が伸びるといわれることもあるのです。
ヘアサイクルを整える
ヘアサイクルを整えることも、亜鉛の摂取で髪が伸びると言われる理由の1つです。ヘアサイクルは主に以下の3期に分けられます。
成長期 | 毛母細胞の分裂が活発におこなわれ、髪の毛が太く・強く成長する期間 |
退行期 | 毛母細胞の分裂が滞り、髪の毛の成長が鈍くなる期間 |
休止期 | 毛母細胞の分裂が完全に停止し、髪の毛が抜け落ちる期間 |
何らかの脱毛症を発症した場合、髪の毛の成長期が短縮され、退行期および休止期が早く訪れ、抜け毛のリスクを高めます。亜鉛によりヘアサイクルが整い、髪の毛の成長期が長くなると、髪の毛が伸びやすくなるのです。
5αリダクターゼを抑制する
5αリダクターゼを抑制することも、亜鉛の摂取で髪が伸びると言われる理由の1つです。AGAによる抜け毛は以下のメカニズムで起こります。
- 男性ホルモンのテストステロンが、ジヒドロテストステロンへと変換される
- ジヒドロテストステロンが男性ホルモン受容体に結合しTGF-βを産生する
- TGF-βの働きでヘアサイクルが乱され抜け毛のリスクを高める
テストステロンがジヒドロテストステロンへと変換される際、重要なはたらきをするのが5αリダクターゼと呼ばれる酵素の一種です。亜鉛には5αリダクターゼのはたらきを妨げる作用があるため、亜鉛の摂取で髪が伸びるといわれる訳です。
髪によいとされる亜鉛を多く含む食品は?
髪によいとされる亜鉛を多く含む主な食品は以下の6種類です。
食品 | 100g当たりの亜鉛含有量 |
魚介類 | 0.8㎎~13.2㎎ |
肉類 | 1.1㎎~3.9㎎ |
海藻類 | 1.0㎎~3.6㎎ |
野菜類 | 0.8㎎~2.1㎎ |
豆類 | 0.6㎎~5.4㎎ |
穀類 | 0.6㎎~3.5㎎ |
以下で特に亜鉛を含む食品、および調理例・食べ方などをご紹介します。
牡蠣
魚介類の中でも、牡蠣(かき)には特に豊富な亜鉛が含まれています。100g当たりの含有量は13.2㎎と、他の追随を許さないほどの含有量となっています。
代表的な調理例の1つが牡蠣フライですが、大人一食分(5個)の牡蠣フライを食べた場合、亜鉛をおよそ7.9㎎摂取する計算です。牡蠣のほかにもカタクチイワシやタラバガニの水煮缶、ホヤ、イカなども亜鉛を多く含む魚介類の一種です。
赤身肉
肉類の中では赤身肉に多く亜鉛が含まれています。中でも亜鉛を多く含む赤身肉が、牛肉の肩ロースです。100gの牛肩ロースには、およそ5.6㎎の亜鉛が含まれています。
アメリカでは肩ロースなどの赤身肉をステーキにして食べることが多いのですが、日本では硬くて敬遠されるケースもあります。そのため、ローストビーフなどにして食べることがおすすめです。肩ロース以外では、牛もも肉も亜鉛を多く含む(100gあたり4.0g)とされています。
焼海苔やわかめ
海藻類にも亜鉛が多く含まれています。中でも焼海苔(やきのり)には100gあたり3.6㎎と豊富な亜鉛が含まれています。しかし、焼海苔1枚の重量はわずか2g程度しかないため、海藻類だけで亜鉛を賄うことは現実的ではありません。
そのため、他の亜鉛を多く含む食品とセットで摂取することがおすすめです。例えば乳製品の一種であるプロセスチーズには、100gあたり3.2㎎の亜鉛が含まれています。そのため、適宜カットしたプロセスチーズに、焼海苔を巻いて食べるなどするとよいでしょう。
切り干し大根
野菜類の中では切り干し大根に亜鉛が多く含まれており、100gあたりの含有量はおよそ2.1㎎です。しかし、焼海苔ほどではありませんが、切り干し大根を1日に100g食べることはあまり現実的ではないと言えるでしょう。
そのため、休みの日などに切り干し大根の煮物を多めに作っておき、食事のたびに副菜として食卓に出すとよいでしょう。また、切り干し大根をアレンジしてサラダにしたり、炊き込みご飯の具として利用したりする方法もあります。
豆やナッツ類
豆やナッツ類にも亜鉛が多く含まれています。特に亜鉛を多く含む食品がカシューナッツやアーモンドです。カシューナッツには100gあたり5.4㎎、アーモンドには4.4㎎の亜鉛が含まれています。
ナッツ類は血液の循環を促進したり、頭皮や髪の毛の老化を予防したりする働きのあるビタミンEも豊富に含まれているため、毎日10粒程度を摂取することがおすすめです。ただし、塩がまぶされている商品は塩分の過剰な摂取につながるため注意が必要です。
ライ麦や小麦
穀類の中ではライ麦(全粒粉)や小麦(全粒強力粉)に亜鉛が多く含まれています。ライ麦には100gあたり亜鉛が3.5㎎、小麦には3.0㎎が含まれています。
全粒粉(ぜんりゅうふん)はライ麦や小麦を表皮と胚芽ごと粉にひいた穀物を意味しており、精製された白い粉ではなく、褐色を帯びている点が特徴です。スーパーなどで全粒粉のライ麦などが見つかりにくい場合には、全粒粉で作られたパンなどを選ぶことがおすすめです。
亜鉛を市販のサプリメントから摂取する場合の選び方
日々の食事で亜鉛が不足する場合には、サプリメントを利用する方法もあります。亜鉛のサプリメントを選ぶ際のポイントをご紹介します。
自分に合った含有量で選ぶ
亜鉛のサプリメントを選ぶ場合には、自分に合った含有量の商品を選ぶことがポイントです。通常の食事で亜鉛を摂取しすぎることは考えにくいのですが、サプリメントの場合は過剰摂取の可能性もゼロではないため、含有量に着目して選びましょう。
亜鉛以外の成分も見る
亜鉛のサプリメントを選ぶ際には、亜鉛以外の成分を見ることもポイントの1つです。髪の毛の成長を促すためには、亜鉛だけでなくタンパク質やビタミン類もバランスよく摂取する必要があります。亜鉛以外の成分にも着目することで、日々の食事で不足しがちな栄養素を効率よく摂取できます。
香りや味で選ぶ
市販の亜鉛のサプリメントを購入する場合、香りや味で選ぶ方法もあります。亜鉛のサプリメントの中には、香りが付けられたグミタイプの商品もあり、おやつ感覚で摂取できるため継続的に服用しやすい点がメリットです。
飲み方で選ぶ
市販の亜鉛のサプリメントを利用する場合、飲み方で選ぶ方法もあります。サプリメントといえば水で飲む錠剤タイプをイメージされる方も多いのですが、グミタイプのサプリメントであれば水が不要で、どこでも気軽に摂取できるといったメリットがあります。
亜鉛を摂取する際に注意するべきポイント
亜鉛は髪の毛だけでなく、免疫力や肌の健康を保ったり、味覚を維持したりする働きがあるため、毎日の摂取が欠かせません。ただし、亜鉛を摂取する際には以下の2点に気を付ける必要があります。
- 過剰に摂取をしない
- サプリに頼らない
亜鉛を摂取する際の注意点について解説します。
過剰に摂取をしない
亜鉛に限った話ではありませんが、特定の栄養素を過剰に摂取した場合、思わぬ不調を招く可能性もあるため注意が必要です。通常の食事で亜鉛を過剰摂取することは考えにくいのですが、サプリメントを利用する場合は、亜鉛の摂取量の目安を知っておきましょう。
年齢 | 推奨摂取量 | 耐容上限量 |
18~29歳 | 11㎎ | 40㎎ |
30~49歳 | 11㎎ | 45㎎ |
50~64歳 | 11㎎ | 45㎎ |
65~74歳 | 11㎎ | 40㎎ |
75歳以上 | 10㎎ | 40㎎ |
サプリに頼らない
亜鉛を摂取する場合、サプリメントにばかり頼りすぎないことが重要です。サプリメントはあくまでも栄養補助食品としての位置づけであり、基本的には日々の食事から栄養素を摂取することが求められます。サプリメントに頼りすぎると、栄養バランスが偏るだけでなく、過剰に摂取してしまう恐れがあるためです。
例えば亜鉛を多く含む食品の1つである牛肩ロース肉には、亜鉛以外にもビタミンB群やナイアシン、鉄、カリウム、パントテン酸などがバランスよく含まれています。
単一の栄養素が含まれるサプリメントに頼るよりも、食事からバランスよく栄養を摂取する方が、早く髪の毛が伸びる結果につながるでしょう。
亜鉛を効果的に摂取するには吸収を助ける栄養素を確認
亜鉛を効果的に摂取するためには吸収を助ける栄養素や、反対に吸収を妨げる栄養素について知っておく必要があります。注意すべき点は以下の2つです。
- ビタミンCやクエン酸は吸収を助ける
- 食物繊維や加工食品は吸収を妨げる
亜鉛を効果的に摂取するための2つのポイントについて解説します。
ビタミンCやクエン酸は吸収を助ける
亜鉛を効果的に摂取するためには、吸収を助ける働きのあるビタミンCやクエン酸を一緒に摂取することがおすすめです。ビタミンCを多く含む食品としては、柑橘(かんきつ)類や赤ピーマン、黄ピーマン、イチゴ、キウイフルーツ、ブロッコリーなどがあげられます。
ビタミンCには高い抗酸化作用があるため、頭皮の状態を健康に保つためにも必要な栄養素の1つです。クエン酸を多く含む食品としては、レモンやカボス、シークワーサーなどの柑橘類があげられます。クエン酸には新陳代謝や血行を促進する働きもあるため、日頃から積極的に摂取するとよいでしょう。
食物繊維や加工食品は吸収を妨げる
食物繊維や加工食品は亜鉛の吸収を妨げる恐れがあります。特にダイエット目的で食物繊維を摂り過ぎると、亜鉛の摂取を妨げる可能性があります。
食物繊維には腸管へ脂肪が吸収されるのを妨げる働きがありますが、亜鉛の吸収も妨げられるため、薄毛を改善したい場合には注意が必要です。
また、加工食品に含まれる添加物の一種であるリン酸は、亜鉛の吸収を妨げるとされているため、特定の食品に偏った食事をしないよう気を付けましょう。
亜鉛にまつわるよくある質問
亜鉛の摂取に関しては、以下の3つの質問が多く寄せられています。
- 亜鉛の効果的な摂取タイミングは?
- 亜鉛の摂取で副作用はある?
- 薄毛は亜鉛を摂取することで治る?
3つの質問にお答えします。
亜鉛の効果的な摂取タイミングは?
亜鉛は基本的に日々の食事から摂取するのが基本ですが、不足分をサプリメントから摂取することもあるでしょう。亜鉛のサプリメントは風邪薬などの医薬品ではないため、基本的に自分の好きなタイミングで摂取すればOKです。
ただ、どちらかというと朝よりも夜の方が亜鉛の吸収効率が高いため、夕飯の後などに亜鉛のサプリメントを摂取するとよいでしょう。夜に亜鉛のサプリメントを摂取することで、就寝中に成分が体内へと吸収されやすくなります。
亜鉛の摂取で副作用はある?
副作用は医薬品を服用した際に見られる好ましくない反応を意味するため、基本的には亜鉛の摂取により副作用が出ることはありません。
しかし、亜鉛を過剰に摂取した場合、鉄分や銅の吸収が妨げられた結果、吐き気や嘔吐、食欲不振、下痢といった消化器系の不調、および頭痛などを引き起こす可能性があります。
とはいうものの、通常の食事で亜鉛を過剰に摂取することは考えにくいでしょう。サプリメントで亜鉛を摂取する場合には、先ほどご紹介した1日当たりの摂取目安に気を付けましょう。
薄毛は亜鉛を摂取することで治る?
薄毛が亜鉛の摂取によって改善するかどうかについては、もともとなぜ薄毛が起こっているかにより異なります。薄毛の原因と亜鉛による改善の可能性について見ていきましょう。
薄毛の原因 | 亜鉛による改善の可能性 |
栄養不足 | 亜鉛不足であれば改善の可能性がある |
睡眠不足 | 亜鉛の摂取だけでは改善が難しい |
ストレス | 亜鉛の摂取だけでは改善が難しい |
髪型 | 亜鉛の摂取だけでは改善が難しい |
遺伝(AGAなど) | 亜鉛の摂取では改善が期待できない |
亜鉛の摂取で薄毛を改善できる可能性があるのは、そもそも日常的に亜鉛の摂取量が足りていない場合です。その他の原因がある場合は、それぞれに適切な対処をおこなう必要があります。
特に遺伝的な要因が大きいAGA(男性型脱毛症)に関しては、亜鉛に限らず特定の栄養素による改善は期待できないでしょう。
より効果的に髪を伸ばしたい方は新宿AGAクリニックへ
亜鉛の摂取で髪の毛が伸びる可能性はゼロではありませんが、より効果的に髪を伸ばしたい方は新宿AGAクリニックまでご相談ください。
亜鉛にはアミノ酸を髪の原料となるケラチンへと再合成する働きがあるため、髪の毛の成長にとって不可欠の栄養素ではあります。
しかし、日常的な亜鉛不足が原因で薄毛になっている場合を除き、亜鉛の摂取だけで薄毛を改善することは難しいでしょう。
薄毛にはさまざまな原因が複雑に絡んでいるため、まずは自分の薄毛の原因を突き止めることが第一です。新宿AGAクリニックでは無料カウンセリングも行なっているため、抜け毛や薄毛が気になる方はお気軽にご相談ください。
【 経歴 】
平成14年 大阪医科大学卒業
平成14年 大阪医科大学形成外科
平成16年 城山病院形成外科・美容外科
平成17年 大阪医科大学救急医療部(形成外科より出向)
平成18年 大手美容外科形成外科部長、多数の美容外科、形成外科で毛髪治療、植毛治療を経験
平成28年 新宿AGAクリニック院長
【 資格 】
日本美容外科学会専門医、日本麻酔科学会認定医、麻酔科標傍医、日本レーザー医学会認定医
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